チョン・ウソン主演の2014年作品『神の一手』のスピンオフである本作の製作陣は、何より主人公グィスのキャスティングに心血を注いだ。チョン・ウソンに引けを取らない熟練したアクションを、すべて自分で演じられる俳優が必要だった。そして長時間の準備の末、満場一致でクォン・サンウに決定した。 クォン・サンウは3ヵ月以上にわたる強度の高いアクションの練習とともに６キロ以上の体重増量、体脂肪を9%近くに絞るという求められた肉体的条件を見事にやり遂げ、囲碁とアクションの練習を交互に行った。特にシーンごとに繰り広げられる新しいスタイルのアクションをすべて消化するため、キム・チョルジュン武術監督と緻密なやり取りをした。 さらに、囲碁に関してもプロの棋士から直接訓練を受け、キャラクターを完成させていった。本作の役作りについて、クォン・サンウは「主人公グィスのように、私自身も修練を与えられた気分だった」と振り返っている。

前作『神の一手』は、囲碁がどれほど熾烈で集中力が必要な競技であるかを描いていたが、本作では細部にこだわり、スタイリッシュかつ様々な囲碁の対決を映像化している。製作陣は各キャラクター独自の囲碁の対局スタイルを盛り込み、死活囲碁、観戦囲碁、猛棋囲碁、賭け囲碁、捨石囲碁、そして神がかった囲碁まで6人6様の囲碁を表現した。 劇中のすべての対決は、『神の一手』から携わってきたム・ソンホ棋士のもと、30名のプロ棋士に監修を受けた棋譜が基になっている。この棋譜に基づいて俳優たちはキャラクターを演じるだけでなく、囲碁に関するさまざまな細部を表現する努力をしなければならなかった。制作会社のファン・グンハ代表が語る。「俳優たちは本当によく練習に励みました。自分が打つ棋譜をしっかりと理解しながら暗記し、囲碁を打つ演技をしてくれた。」

スタイリッシュな囲碁シーンとともに本作の大きな見どころになっているのが、観る者にカタルシスをもたらすアクション・シーンの数々だ。武術監督のキム・チョルジュンが語る。「囲碁が相手の一手を逃さないように、本作では相手の動作をよく見ないといけないアクションとして表現されている」。特定の武術を習わず、独学で体力と格闘の修練を重ねたグィスのキャラクターのように、あらかじめ合わせたようなわざとらしさのないアクションの演技が必要だった。キム武術監督がクォン・サンウのアクション俳優としての能力の高さについて語る。「アクションがうまく、集中力もすごい。普通は１～２日要することを、彼は２～３時間ですべて覚えるんだ」。クォン・サンウは骨太なアクションと華麗なアクションをスタントなしに演じ、グィスならではの独創的なアクションのスタイルを完成させた。

また、本作には俳優とスタッフの努力で誕生した３つの特徴的なアクション・シークエンスが登場する。まずグィスと敵の男たちが争う“トイレ・アクション”は、光と闇、明暗の対比が際立つシーンだ。キム・ドンヨン撮影監督は「フラッシュを使い、暗闇状態から突然明かりがついて繰り広げられるアクションは、本作の撮影コンセプトが最も表れているシーン」と語る。 さらに、グィスの肉体が際立つ“路地裏アクション”は、近距離での手に汗握る強烈な張感を与える。最後に、前作の“冷凍庫アクション”と対比される鋳物工場での熱いアクションは、グィスと孤児のウェトリの明らかな感情の対立が感じられるシーンに仕上がっている。ウェトリの切迫したアクションと、彼の思いを理解するグィスの抑えられた感情が融合し、本作ならではのスタイリッシュなアクションに仕上がった。

『神の一手』にも携わった本作のスタッフは、幼いグィスと大人になったグィスのそれぞれの登場シーンに合わせ、セットなどの質感と色の対比を活用し、時間の流れを表現しようとした。キム・ドンヨン撮影監督は、グィスの少年時代のパートでオレンジの色味を与えるタングステン照明とアナモフィックレンズを使い、昔の映画を思わせるレトロな感じに仕上げた。そしてグィスが危機を乗り越えて冷徹な姿に成長していく過程では、少しずつ青系統の色を混ぜながら対比を作った。さらに、グィスが大人に成長してからは広角レンズを積極的に使い、観客が人物をより近くで感じられるよう変化を加えた。 色彩の対比とともに、強烈なキャラクターの背景にも注目だ。全国各地に散らばる個性あふれる囲碁の名人たちとそれぞれの人物に合わせた異色の空間的な背景は、まるでゲームや漫画の中から登場してきたかのような楽しさを与えてくれる。加えて、キャラクターごとに異なる色味や質感を用いて完成させたイメージは、独特の魅力にあふれた本作のスタイリッシュな空間を鮮烈に印象づけている。